2024.06.08 第18回(令和6年度)

サンプルイメージ論 文 賞

【論文】

鳴海邦匡・渡辺理絵・小林茂(2022)「台湾遠征~日清戦争期までに台湾の主要港湾について作成された英国製海図の翻訳(覆版)にみえる地名表記」地図,60巻1号,17-35.通巻237号に掲載【論説】

【受賞者】

鳴海邦匡 会員(甲南大学)・渡辺理絵 会員(山形大学)・小林 茂 会員(大阪大学名誉教授)

【受賞理由】

 本論文は,明治前期の地図上の地名の形成過程について著者らが丹念に追跡を行った大作である。現在とは異なり非常に情報を得ることが困難な中で,台湾遠征に際して短期間で地図を作製しなければならなかったことを踏まえ,当時日本がどのように地名情報を収集し,修正を通じて適正化を行っていったかについて,著者らの豊富な研究実績も踏まえながら解明することが極めて難しいその実像に迫っている。港湾の名称表記の変化を追跡したのは主に4つであったが,その中に多様性を見いだしつつその変遷について筆者らが実施した分析は,当時の日本が地名表記を決定した過程について読者に対して大きな示唆を与えた。手がかりの少ない中で適切に史料を選択し,明治前期の地名表記の決定過程を明らかにするという極めて困難なテーマに対し,成果を遺したことが極めて高く評価された。