2023.10.31
第17回(令和5年度)
論 文 賞
【論文】
鳴川 肇(2022)「オーサグラフ図法の数式化と歪み評価」地図,60巻1号,1-16.通巻237号に掲載【論説】
【受賞者】
鳴川 肇(慶應義塾大学 環境情報学部)
【受賞理由】
1999年に鳴川会員などによって考案されたオーサグラフ図法は,地球上の陸地の面積をほぼ正確に四角形の平面に描き,同時に,メルカトル図法と同じように海などに断裂がなく,一覧性が高い。また,メルカトル図法が持つ「高緯度地方の面積の表現」の欠陥が解消されている。2016年にはグッドデザイン賞を受賞するなど,高いデザイン性を有した世界地図である。しかし,デザインからスタートした世界地図であるため,地図投影法などの数学的な理解と投影法としての課題や限界が明確ではなかった。本論文は,鳴川会員自らが,オーサグラフ図法の数式化に取り組んだ論考であり,数学的な考察から地図投影法としての成果と課題を明らかにした論文である。角度,距離,面積の3要素を正距円筒図法,メルカトル図法,ランベルト正積円筒図法と評価式を用いて比較検証することで,投影法としての成果と限界を明らかにした労作である。デザインと論理性の融合を地図が指向するなかで,本論文は,デザインを契機に発展してきた地図投影図法を数量的に評価する考察方法について,大きな示唆を与えるものであり,その内容は高く評価される。2022年日本地図学会定期大会「特別セッション:オーサグラフの式とかたち」での討議などを踏まえ,デザインと地図投影法の関係性に関する研究が深化する期待も高く,日本地図学会論文賞として表彰するものである。