2025.06.18
第19回(令和7年度)
特 別 賞
【受賞者】
野上道男 会員
【受賞理由】
野上道男会員は,伊能図についてデジタル化された画像データを用い,画像を構成するピクセルの位置を座標に換算して,距離や方位の計測を行い,地図の精度を定量的に検証する論文を多数発表してきた。一連の論文は2019年から2023年までの5年間に8編にのぼる。中でも,「地図」57巻3号掲載の天文測量・横切測量・方位測量による測線位置の補正が地図の精度向上にどのように寄与したかについて論じた「伊能大図における星測と横切測量・方位測量による導線位置の補正-第4次測量までの例-」は,令和3 (2021)年の論文賞を受賞している。さらに2024年には,魏志倭人伝の方位と距離の記述を考える上で留意すべき中国の歴史書『後漢書』郡国志記載の方位と距離について,現在の地図上の文献に記載された測量位置を推定し,その位置座標から計算により精度を検証するなど,2編の論文を発表した。
以上のように野上会員は,10編におよぶ論文により,これまで定性的になりがちだった紙に描かれた地図や古代測量の記録の精度を定量的に算出する方法を提案するとともに,伊能図の測線および『後漢書』郡国志記載の位置と方位の精度を数値的に明らかにするなど,地図学の発展に大きく貢献した。